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平成27(2015)年度 高校第3学年 後期終業式 2016年01月22日(金)11時01分

学校長式辞

 みなさん、おはようございます。
 さて本校も、今年創立140周年を迎えますが、ここ十数年で大きな変化を遂げました。振り返りますと、明治9(1876)年滋賀県彦根の地に「金亀教校」として創立されましてから126年間男子校であった平安が、2003(平成15)年に男女共学となりました。さらに5年後の2008(平成20)年に龍谷大学付属平安中学校・高等学校と校名を変更いたしました。そして、昨年4月1日学校法人平安学園は学校法人龍谷大学と法人合併し新たな歩みをはじめました。いよいよ、本年2016(平成28)年、創立140周年を迎えます。
 3年生のみなさんは今春卒業されますが、本年11月12日(土)に140周年の記念式典と記念祝賀会ならびに記念同窓会を開催する予定であります。みなさんも同窓としてご出席いただければと思います。
 現在、今春の卒業生であるみなさん(138期生)は含まず、卒業生総数は41,947名です。また、平成15(2003)年男女共学の1期生が2006年3月に卒業しましたが、そのうち女子の卒業生も1,315名となりますことをお知りおきください。
 さて、お正月は、ほんの束の間だったかも知れませんが、家族がコタツを囲み、もしくは、年末年始旅行に出かけお正月を外で迎えた人もいるかも知れません。少しはゆっくり過ごせましたか。そのお正月も返上し、3日からのセンター入試直前演習で最後の調整をして、この土日のセンター試験に臨んだみなさん、たいへんお疲れさまでした。この後も、2月・3月と入試本番を控えておりますので、気を抜かず頑張ってください。
 それでは今日は、昨年PHP研究所から発刊されました、大谷光真前ご門主著述の『人生は価値ある一(ひと)瞬(とき)』と題された御本をほんの少し紹介いたします。「まえがき」に次のように記されています。

 「人生を空しく終わってはならない、終わらせてはならない」ということが、私の願いです。それは、物質的な豊かさ、健康、快適な人間関係とは、必ずしも一致することではありません。快適な生活を求めて、世の中の流れに身をまかせるだけでは、何かのために利用される手段・道具になってしまうおそれもあります。
 外見的には困難に見える人生でも、目に見えない大切なものをわが身に持っているならば、こころ豊かな、空しくない人生となりましょう。
 目に見えない大切なものとは、一人ひとり、縁によって獲得するべきものですが、私にとっては、仏教の教えです。手っ取り早い解決法にはなりませんが、今さえよければ、自分さえよければという狭い思い を打ち砕く大切なはたらきを持った仏教を手がかりに、現代生活のさまざまな課題に、どう対処すること ができるかを考えてみました。本書が少しでも人生のヒントになればと思います。

と、このように記され、そのあと六章で構成されています。その2章「素直に生きるために」という章の中の一つを紹介いたしましょう。

 わたしたちは、生まれたときから常に、「進歩」することを生活の原理としています。学校では、多くの知識を増やして成績上位を目指し、会社に勤めると、業績を上げてより高い収入と地位を目標とします。近代の日本人を導いてきたのはこの「進歩」の思想で、確かに優れた点もたくさんありました。しかし、他方では、受験戦争など激しい競争社会を生み出してきたのも事実です。
 こうした学歴や出世、収入などは、他人と比較して外から見える「進歩」だとすれば、同じ「進歩」でも、外から見えない「進歩」があります。自分の内面における「こころの進歩」です。
 「こころの進歩」とは、ほかの人と比べてよりよい人間になることを言うのではありません。自分がいかにいたらない人間であるか、いかに自己中心的な人間であるかに気づきはじめることを言います。そこに気づけば、「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という箴言(しんげん)にもあるとおり、おのずから他人に対して謙虚になります。
 とはいえ、人間はなかなか自分を正しく見られません。ともすると、よい点は過大に認め、悪い点は割り引いて見るなど、自分に甘く、他人に厳しくなりがちです。自分のほんとうの姿は無意識に見ないようにしてしまうからで、それだけに、「こころの進歩」を意識して生きる必要があると思います。

 前門さまは、「こうしなさい、こう生きるべきです」とは決して断定せず、私たちに気づかせる道しるべを示してくださっているように思います。実はみなさんの過ごした龍谷大平安での3年間・6年間も、学問を学ぶことはもちろんですが、それよりも何よりも集団生活の中で人間関係をしっかりと築き、「こころの知性」を磨く大切な修練の期間だったのです。
 正に、目に見える華やかさではなく“目に見えないもの”の大切さ、つまりは「こころの進歩」を意識して日々の生活を過ごしてください。そして常に、仏さまを悲しませない生き方を心がけて日々精進してくださることをお伝えして私の式辞といたします。