HEIAN BLOG 校長 BLOG

記事一覧

平成28(2016)年度 第3学年 後期終業式 2017年01月20日(金)11時56分

学校長式辞

 みなさん、おはようございます。
 さて、昨年を振り返ってみますと、創立140周年の記念事業と銘打ってたくさんのことをしました。

①4月1日「平安の願い“三つの大切”―建学の精神―」冊子発行
②5月9日「教育講演会(高1対象)」講師:岩室紳也氏 内容:思春期・若者を知るためのシンポジウム
③5月19日「教育講演会(保護者)」講師:桧山進次郎氏 内容:野球人生を支えた”こころ”(演題)
④5月21日 創立140周年記念日・宗祖降誕会
⑤6月16日「教育講演会(高2・3対象)」講師:水谷 修氏
⑥9月4日~8日 創立140周年記念学園祭(文化祭・体育祭・音楽祭(中学))
⑦11月12日「教育講演会(中・高校生)」講師:太田雄貴氏
      14:00 記念式典 15:30~16:30 記念☆生徒パフォーマンス 17:00 記念祝賀会・記念同窓会

 みなさんが、直接知らなかった事業も含めてたくさんの催しをしてきました。明治9(1876)年に滋賀県彦根の地に「金亀(こんき)教校」として創立された平安は126年間男子校でありましたが、2003(平成15)年に男女共学となり、5年後の2008(平成20)年に龍谷大学付属平安中学校・高等学校と校名を変更しました。そして、昨年、めでたく創立140周年を迎えたのです。3年生のみなさん411名が今春卒業され、卒業生総数は約43,000名ということになります。知っておいてください。
 さて、お正月は、ほんの束の間だったかも知れませんが、家族がコタツを囲み、もしくは、年末年始旅行に出かけお正月を外で迎えた人もいるかも知れません。少しはゆっくり過ごせましたか。そのお正月も3日からのセンター入試直前演習で最後の調整をして、この土日のセンター試験に臨んだみなさん、たいへん、お疲れさまでした。この後も、2月・3月と入試本番を控えておりますので気を抜かず頑張ってください。
 今日は、昨年9月PHP研究所から発行されました、大谷光淳ご門主著述の「『ありのままに、ひたむきに』~不安な今を生きる~」から、一つのお話しを紹介させていただきます。
「人工知能や人型口ボットの進化で『人が生きていくこと』の意味が問われる」と題して記されています。

 これからの時代、人工知能(AI)あるいは人型ロボットの進化で、「人が生きていくこと」の意味が、改めて問われるようになってきます。おそらく、いまの四十代半ばから下の人たちにとっては、自分たちの仕事に影響する極めて現実的な問題になると思います。
 若い人の場合は、社会の中で今、人がしている仕事を、ロボットがどんどんこなしていく時代に直面するわけです。
 人間関係の悩みにしても、携帯電話のなかった時代とある時代とではやはり違います。携帯電話(スマートフォン)が普及した現代の日本でも、通話目的だけで使っている人と、不特定多数の人とつながるツールとして使っている人とでは、かかえる問題が違います。
 特に、私より若い世代の人たちの情報源は、新聞やテレビ、本からインターネットという媒体に変化し、人との交流には、インターネットによるコミュニケーション手段であるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を使う人が増えています。そこで起こる問題、不特定多数の人との交流が招く問題などを考えれば、SNSなどのツールをどううまく活用するかを考えていかなければなりません。
 時代の変化とともに、特に若い人のかかえる悩みは変化していくということを、もっと意識していく必要があるのではないかと思います。

とこのように記されています。現在、人間が開発した人工知能がますます高度なことを成し遂げようとしています。いったい人間が作り出した機械の頭脳は、いつまで人類の手の中にいるのでしょう。機械が人間を操る時代がもうそこまで来ています。
 例えば、みなさんはEyeSight(アイサイト)ってご存知ですか。EyeSightは、富士重工業と日立製作所・日立オートモティブシステムズが開発した「衝突被害軽減ブレーキ」のことです。車内前方に装備されたステレオカメラで前方を監視し、障害物を三次元的に認識することで、自動ブレーキ、クルーズコントロール等を制御する「運転支援システム」のことです。私は難しいことはわかりませんが、富士重工業が製造しスバルブランドで販売する乗用車に装備されており、市販車用に実用化された世界初のシステムです。
 実は、ご門主さまは、昨年11月12日の創立140周年記念式典でのお言葉の中でも人工知能について言及されました。式典でお話になった内容はこのようなものです。

 人間とロボットの違いは何であるのか。その違いは私たち人間には心がある、だからこそ宗教を持つということでありましょう。新聞によりますと、人工知能の全自動の車が動き始めた時、私たち人間は、究極的な選択を迫られることになります。
 それは、全自動で走っている車の前に突然、人が飛び出してきたとき、その車は飛び出してきた人を守るように行動するのか、あるいは、乗っている人を守るように行動するのか、ということを私たち人間が決めなければいけない。すべての人を守ることが出来ない状況をどのようにロボットに行動をさせるのかということを私たちが決めなければいけません。
 科学技術の発達した現代であるからこそ、私たち人間の生き方が問われることになります。そして、それは、日々の生活の中で私たちがどのように自分の命の問題を考え、周りの家族の方、友達のことなどを考え生活していくかということにつながります。
 その背景には、必ず宗教が必要になります。浄土真宗のみ教えを建学の精神とする龍谷大学付属平安高等学校・中学校、これからも建学の精神を大事にされ、多くの生徒やその保護者に対し、浄土真宗のみ教えと宗教をもとにした教えを伝えていただくことを切にお願い申し上げます。

 というお言葉でありました。日常生活の中で、悩みや苦しみを抱えながら生きていかなければならない私たちにとって、お釈迦さまは「必ず救い取るぞ」の阿弥陀さまのご本願をお説きくださり、人がひととして生きる道をお示しくださいました。その教えを受けて、真実の人生を歩まれた親鸞聖人は、阿弥陀さまのご本願を聞きひらいた時、自己を真摯に見つめ、かけがえのない「いのち」を大切に生きていく道が開かれてくると教えてくださいました。
 龍谷大平安の3年間・6年間は、みなさんの心に「思いやりの心」を育て、「自制・協力・調和の心」を育む。そんな豊かな心をもった人間に育ってほしいというのが、龍谷大平安の願いだったのです。そして、具体的には、日常の心得として「ことば・じかん・いのちを大切にする生き方を学びましょう」と呼びかけてきたのです。
 記念式典でのご門主のお言葉、「人間とロボットの違いは何であるのか。その違いは、私たち人間には心がある、だからこそ宗教を持つということでありましょう」正に、「IQ」(知能指数)や「SS」(偏差値)のように数字では表すことのできない大切なもの、「EQ」、「こころの知性」、「こころ」を育てることこそが、実は、仏教的なものの見方のできる人間を育てることであり、それが本校の「徳育」に他ならないのです。
 2018(平成30)年、2019(平成31)年には、小学校と中学校でそれぞれ、道徳教育が教科化されます。義務教育において、道徳、つまり人がひととして生きる道について、それぞれが自らがしっかり考える必要性が問われてきます。こういう時代にあるからこそ、「EQ」(こころの知性)を磨く大切な修練の期間が龍谷大平安で過ごした学校生活だったのです。
 みなさんは、これから、高校生からほとんどが大学生を経て、大人の社会に入って行かれますが、本当の意味で、目先の目に見える華やかさではなく“目に見えないもの”の大切さ、つまりは「こころの進歩」を意識して、そういう生き方を心がけて日々精進してくださることをお伝えして私の式辞といたします。