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平成29(2017)年度 後期始業式 2017年10月05日(木)11時27分

学校長式辞

 みなさん、おはようございます。
 前期考査を終え、3日間の試験休みをおき、本日より平成29年(2017)年度後期がスタートいたします。
 さて、みなさんには、4月の仏参で『下町ロケット』のモデルといわれています植松努さんという方のお話をしました。
 小さい頃からロケットが好きだった努少年ですが、周りからはロケット打ち上げなんかできるわけないとさんざん言われながらも、お母さんが教えてくれた「思うは招く」という言葉を胸に、思い続けたら「夢が叶った」というお話でした。
 この「思い続ける」ということの大切さと、もう一つ大切な内容がありました。「どーせ無理」ではなく、他人に相談されたら「だったらこうしてみたら?」と言ってくれることの大切さです。「だったらこうしてみたら?」という一言が、この世からいじめも虐待もなくすことに繋がるのです。それが、人と人とが出逢うことの意味であり、お互いに助け合っていくことの大切さを教えています。
 このことを受けて今日は、その目標、夢を達成するために、どのようなメンタル、心を磨くトレーニングが必要かということをもう少し具体的に考えてみましょう。
 最初から「どーせ無理」ではなく、まず何事をするにも、何のためにそれをするのかという目的をしっかり持ち、その上で、短いスパンでの目標をしっかり立てることを心がける必要があります。これは、前期の始業式でもお話しました。
 植松努さんも、「アポロの月着陸」をおじいちゃんと一緒にテレビで観ていて、まず最初に、ロケットを作りたいと思ったのがきっかけでした。つまり、まず、何事においても最初の感動を忘れてはいけません。
 たとえば、スポーツでたとえてみますと、みなさんが、今やっているスポーツを初めて見たときの感動を覚えていますか?
 「わぁ!おもしろそう!! やりたい!楽しそうだ!」このように思ったのではないでしょうか。
 次に、実際にそのスポーツを初めてやったときの感動を覚えていますか?
 「楽しい! 面白い! もっと沢山やってみたい!」恐らく、こんな思いだったのではないでしょうか。
 このような率直な気持ちこそ忘れてはいけない、大切な初心の気持ちです。迷ったとき、壁にぶつかった時こそ、「初心・原点忘れるべからず」です。
 スポーツに限らず、一つのことを続けていくと、色々な困難にぶつかります。特に調子が上がらずずっと「スランプ」が続いた時、どうにかして脱け出したいけれど、いくら努力しても中々、抜け出せないことがあります。みなさんもこのようなことを経験したことがあると思います。
 こういった状態はどのようにして切り抜けたら良いでしょうか。
 では、「スランプ」に陥った時、私たちはどうしているかを想像してみてください。悩んで色々と考えるのですが、行き着くところは「元々、このスポーツが好きで面白いからやっているんじゃないのか。だから始めたのではないのか!」と、原点に立ち返るのではないでしょうか。こうして「初心に戻る」ことでモヤモヤした気持ちが晴れて、スランプが克服出来たという経験をもっているのではないでしょうか。
 トップアスリートの中にも「初心忘れるべからず」という言葉を座右の銘にしてサインなどで色紙に書く人もいます。なぜそういった言葉を書くのか。それは、日々の厳しいトレーニングの中で、たくさんの困難、スランプを克服していくときの大切な心の支えだということを知っているからです。結局、心、メンタル、気持ちの持ち方しだいということになります。
 とはいうものの、こうしたメンタルの持って行き方というのはたいへん難しいものです。初心者のうちは、やればやるだけ、どんどん上手くなっていくのが自分でも分かり、面白くなり、試合に出るだけでも楽しい気持ちになります。そうしていくうちに、もっと高い目標を持ち、それを達成したいという気持ちになります。これが、内からわく「モチベーション」、つまり「やる気」です。
 しかし、上達していくと、更にハードルが上がり、レベルの高いチームに入ったり、指導者からも厳しい要求がでてきます。いつの間にか、指導者からやれされるトレーニングになったり、顔色を伺ったりということになります。叱られるからやる、負けたら怒られるからやる、といった「外からやらされている感」となってきます。当たり前のことながら、このような気持ち「やらされている感」より、自分自身の心の内側から生まれた「モチベーション」「やる気」を持ったほうが、より強くなり、上達するのは想像が付きますよね。
 さて、あなたの気持ちは、「やらされている感」、それとも、内からわく「やる気」、どちらのタイプですか?みなさん一人一人が、初心を忘れず、その気持ちを大切にしていくことが、目的や目標達成のためには欠かせないものなのです。そして、植松さんのお母さんの言葉「思うは招く」の通り、「どーせ無理」ではなく、常に思い続け心を磨き続ければそうなる、夢は叶うという気持ちを持ち続けることが大切なのです。
 こうして、日々の学校生活では、心を磨く、メンタルのトレーニングをしているのです。と同時に、植松さんが言うように、友だちに相談されたら、相手に寄り添う思いやりの心をもって接して欲しいのです。こんなやり取りが校内に溢れることこそが、龍谷大平安の願いです。
 昨年10月1日、伝灯奉告法要初日に浄土真宗本願寺派第25代専如ご門主が「念仏者の生き方」を示されました。そこには、お釈迦さまが開かれた「仏教」、親鸞聖人が出遇われた「阿弥陀如来の救い」、そして、その教えをいただく私たちが、どのように生きていくかが説かれています。
 私たちは、仏さまの智慧と慈悲を正しく理解し、そのお心にかなうよう一人一人が行動することにより、自他ともに心豊かに生きていくことのできる社会の実現に努めたいものです。とおっしゃいました。
 それが、本校の『建学の精神』が教えるところであります。相手の悲しみや痛みが自分の悲しみや痛みと感じることが出来る他人への思いやりの心が育まれ、こうした生き方を心がけることが、いのちを磨くことに繋がっているのです。
 先日の学園祭も、みなさんは、しっかりと自分の心を磨き、確実に成長してくれています。それが証拠に、今年の学園祭も素晴らしいものとなりました。やり終えた後にみんなで互いの労をねぎらいながら涙する場面も見られました。他人への思いやりの心をもつことが何よりも大切なのであります。
 そして、学園祭の閉会式でも話しましたが、学校って何を学ぶところですか?というと、学業はもちろんのことですが、それ以上に大切なものがあります。それは、「集団の中の個のあり方」を学ぶのです。つまり、集団生活を通して自分を磨く場所が学校なのです。
 クラスの絆を確かめ合ったり、学年の垣根を越えて、仲間が協力し合ったり、そんな中で、自分一人では何もできない私たちですが、みんなに支えられて、生かされている自分というものに気づくことができるのです。このことを、しっかりと胸に刻み、みなさんそれぞれ今後も日々精進してください。