HEIAN BLOG 校長 BLOG

記事一覧

平安会 総会 挨拶  2012年05月11日(金)13時30分

2012/05/11(金)13:30~                       於、本校講堂
平安会総会 校長挨拶

 本日はお忙しい中、平安会総会ということで、学校にお出まし下さいましてありがとうございます。また、日頃は、平安学園に対しまして、ご理解とご協力をいただき誠にありがとうございます。
 ご承知の通り、1876(明治9)年滋賀県彦根の地に「金(こん)亀(き)教(きよう)校(こう)」として創立された我が学園は今月21日で満136歳になります。ちょうど10年前の平成14(2002)年126歳まで男子校であった平安中学高等学校は、平成15(2003)年より男女共学、アスリート・クリエイト・プログレスの3コース制がスタートし、平成20(2008)年には龍谷大学付属平安中学高等学校となりました。137年目に入る今年度、コースコンセプトを明確化させ新たなスタートを切りました。そのスタートの時期に、安井前校長からバトンを受け校長職を仰せつかり身の引き締まる思いであります。
 さて、みなさんの中には入学式でお聞きいただいた方もおられると思いますし、また、現在、本校のHPに私の挨拶として載せておりますEQのお話しをいたします。
 みなさんはIQをよくご存じだと思います。「知能指数」です。しかし、IQのように数字では表せない大切なものがあります。それがEQです。EQとは「こころの知能指数」のことで、EQのEは英語のEmotionalで“情緒”や“感情”です。情動とも言います。つまり“こころ”のことです。私は、人間の「言動」つまり、言葉と行動はすべて心の有り様(よう)に始まると考えています。心をどう持つか、その心の持ち方一つで、感情を落ち着け、情緒を常に安定したところには、素直な心と謙虚な心が根づきます。その心の有り様をみんなが意識して日々の生活を送れば、本当にすばらしい人間関係や環境が築けるはずです。
 本校では、何よりもまず第一に「生活偏差値」を高めようということを重点目標にしております。実は、この生活偏差値の基本になるのがEQ(心の知性)なのです。このEQを高めることが、人間力を高めることになり、ひいては学力も向上していきます。充実感・満足感・不快感・嫌悪感など感とつくものは、すべて、こちらの心の持ちようです。
 今からお話しすることは、読んでいただいた方もおられるかもしれませんが、今年の合格体験記に載せたものですが、たまたま手にした本の1フレーズに書かれていたことを紹介したいと思います。
 今からずいぶん前の話ですが、アメリカでおもしろい調査がされました。4歳児数十人を前に、その一人一人の前にマシュマロを2個ずつ置いて、「おじさんが戻るまでは、決してマシュマロを食べてはいけないよ。もし、どうしても食べたくなったら1個だけは食べてもいいよ。」と言って、そのおじさんは外出しました。そして、そのおじさんは30分後に戻ってきました。子どもたちには、おじさんが戻る時間はわかりませんし、あくまでも、食べてはいけないことが強調されていたのですが、結果、4歳児の6割~7割くらいが、全く手をつけていなかったのです。残りの4歳児は、1個だけ食べたわけですが、その全てが、おじさんが出て行った直後に食べてしまったのです。
 実は、その調査をした4歳児数十人の10年後、20年後を追跡調査したそうです。そうすると、意外な事実が解りました。マシュマロに全く手をつけなかった者は、学生時代も何をするにつけても中心的存在で、社会に出てからもある一定のポジションについてパリパリやっていたのです。ところが、おじさんが出て行った直後に、マシュマロを1個食べた者は、学生時代にはいずれも友人関係が上手くいかず、社会に出ても定職に就けない者がほとんどだったのです。
 たかだか数十人の調査ですので、確かなことは言えませんが、この調査で見えてくることがあります。「三つ子の魂百まで。」「雀百まで踊り忘れず」という言葉がありますが、4歳の時に「我慢」が身についていた人は、その後も、色々な場面で「我慢」する術を知っていたということでしょう。つまり、いろいろな場面で「我慢」できる心をつくることも、EQ「こころの知性」を高めているのです。
 私事ですが、私の家内を見ておりますと、母親の子どもを観察する洞察力というのはすごいものだと感じます。私には4歳の男の子がおります。先日、4歳の男の子がお腹を壊した時のことです。目の前でしゃべっていた私は全く気付かなかったのですが、遠目で見ていた家内が突然、その子の手を引っ張って洗面所に行きました。と同時に子どもが嘔吐を始めました。子どもの顔色・仕草をつぶさに見ていたのでしょう。母親の観察力のすごさを改めて感じました。みなさんもそうだったのではないでしょうか。お子さんの変化をしっかり察知されていたのではないでしょうか。では、中1の13歳から高3の18歳になられたお子さんに対して、そういう見方ができているかということです。
 ある塾の先生が内の塾生の母親は本当に熱心でよく子どもに関わっているとおっしゃいましたので、どのように関わっておられますか、と尋ねましたら、夜遅くの送り迎えはもちろん、模試の偏差値もしっかりと分析されて、常に子どもに檄を飛ばしておられるというものでした。その関わりも大切でしょう。しかし、私が言っている関わりと少し違うと思われませんか。
 私は長く生活指導を担当しておりましたので、貴重な経験をたくさんさせていただきました。特に、宇治少年院・大津鑑別所・大阪交野女子少年院に研修に行った時のことです。全ての院長・所長・各先生方が口を揃えて言われたことがあります。この子たちにもう少し親が関わっていたら、誰一人ここに来ることはなかったでしょうね、という言葉は今も忘れられません。
 本校の教員にも、今年度のスタートに際して、生徒一人一人と膝をつき合わせ対峙し、しっかりと関わってください、とお願いしました。そういう意味で面倒見がいい学校にならなければなりません。保護者のみなさまは当然しっかりと関わっていただいているとは思いますが、もし関わりが今は薄くなっているなとお感じの保護者は、今からでも遅くありませんので、しっかりとお関わりいただきたいと思います。
 それでは、保護者のみなさまには、色々とお世話になるかと思いますが、どうぞ我々としっかりと手をつなぎ、心を開いてものを見ることができるように、宗教的なものの見方ができるように、子どもたちのそんな人格形成、人間づくりにご協力をいただきますようお願いいたしまして、私の挨拶とかえさせていただきます。