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祝 第65回龍谷大学付属平安高等学校卒業証書授与式 2013年03月01日(金)17時00分

平成24(2012)年度 龍谷大学付属平安高等学校 卒業証書授与式

学校長式辞

 暦の上では、春の暖かさを感じて冬ごもりしていた虫が外に這い出てくる頃を意味する二十四節気の一つ啓蟄(けいちつ)を目の前に控えていますが、ここに来て非常に厳しい寒さが続きました。校庭には二本の紅梅がありますが、今年の寒さを象徴するように開花遅れの報、しかし、寒さも峠を越え、ほんの少しほころんだ梅の花に春の訪れを感じる今日の佳き日、龍谷大学付属平安高等学校の第65回卒業証書授与式を挙行するにあたり、龍谷大学学長、法人理事・評議員の先生方をはじめ、学園同窓会、親和会・平安会の役員のみなさま、多数のご来賓のご臨席を賜りましたことに、理事長とともに衷心より御礼を申し上げます。また、保護者のみなさま、ご子女の晴の卒業式典にご列席賜りましたことに、祝意ならびに謝意を表します。誠におめでとうございます。卒業生517名のみなさん、ご卒業おめでとうございます。
 それでは、私からみなさんに贈る言葉として、今年度の始まりにあたり始業式でも、また1月25日の終業式でもみなさんにお話ししましたEQのおさらいをしたいと思います。
 EQすなわち「こころの知能指数」とは何でしょう?それは、知能テストで測定されるIQとは質の異なる頭の良さです。自分の本当の気持ちを自覚し尊重して、心から納得できる決断を下す能力。衝動を自制し、不安や怒りのようなストレスのもとになる感情を制御する能力。目標の追求に挫折したときでも楽観を捨てず、自分自身を励ます能力。他人の気持ちを感じとる共感能力。集団の中で調和を保ち、協力しあう社会的能力。というような「情動の自己認識」がEQの根幹であります。実は、このような思いやり、自制、協力、調和を重んずる価値観は、われわれ日本人の本質とも言えるのです。科学技術が発達し、すべてのことが自分の思い通りになると錯覚してしまいがちな現代にこそ、IQのように数字では表せない「こころの知性」EQの大切さを知って欲しかったのです。自分自身の感情や他人との関係をうまく処理する能力こそ、人生を最終的に大きく左右する知性であるからです。
 現代社会は非常に不安定な社会で、さらに、青少年にかけられているプレッシャーも非常に大きいと思います。だから、親切や思いやりの教育が必要なのです。EQという言葉を通して「こころの知性」の大切さを日々申してきました。つまり「こころの教育」こそが、龍谷大平安の真髄であり、みなさんに、すぐにとは言いませんが、長い人生のいずれかの場面でよりどころとなることだと確信しています。
 最後に、みなさんの卒業アルバムに、平安の三つの大切「ことばを大切に・じかんを大切に・いのちを大切に」添えて、『煩悩障眼雖不見 大悲無倦常照我』という言葉をしたためさせてもらいました。これは、私たちが、日々お勤めする『正信念仏偈』(親鸞聖人のお書きになられた『教行信証』の行巻にある仏徳を讃嘆する歌)の中の七高僧のお一人、源信和尚の述懐の箇所にある一節であります。
――悲しいかな、煩悩のためにわが眼はおおわれてしまって真実の有様を見ることができないですが、よろこばしいかな、如来は大慈悲の心をもって、倦(う)みつかれることなく、常にわが身を照らし続けて下さっているのですよ――
 われわれ凡夫は、煩悩によって本当の姿、真実の姿をついつい見失ってしまいますが、阿弥陀如来は常に私たちを照らして下さっています。そんな中で、私たちは心の持ち方、感情を落ち着け、情緒を常に安定させましょう。すると、素直な心と謙虚な心が根づきます。そんな心の有り様(よう)を意識して日々の生活を送りましょう。
 次の日本を、そして世界を背負って立つみなさんに涵養した宗教的情操こそが、これからの行動の基盤に据えられることを願っております。
 どうぞ、龍谷大平安で青春を過ごしたことを誇りに、自らのいのちを磨き続ける人生を送られますことを心より念じて、私の式辞といたします。