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前期を終えて 2020年09月29日(火)12時47分

■その一
 登山を趣味にしている友人のお話です。登山の喜びというものは、麓から重い荷を担いであえぎあえぎ一歩一歩登っていくところにのみあります。ヘリコプターで山頂まで運んでもらったのでは、山頂の眺めは楽しめても登山の喜びはありません。登る途中での人々との交流の楽しさ、移り変わるさまざまな自然の姿への感動、山の命の息吹を呼吸している実感――こんなものを味わいながら、一歩一歩登っていくプロセスこそ登山の喜びなのです。もちろん、自分の体力の限界を注ぎ込んで山と格闘し、最後に頂を極めるという喜びもあります。
 恋愛だって同じようなものでしょう。二人が愛を育て合ってゴールイン。そこが幸せの頂でしょうが、実はゴールに至るまでのプロセスあってのものです。プロセスなしの愛なんか危ないものです。恋が芽生え、行きつ戻りつ、二人が愛を次第に確かなものにしていくプロセス。「只今恋愛中」の時にこそすばらしい幸福感がある。その過程で二人は心豊かになり、人間的にも成長していく。「只今恋愛中」の時ほどすばらしいものはない。人生最高の幸福です。みなさん、恋は人生の必修科目であることも忘れないように!
 前期考査を終えて、いよいよ来月から後期がスタートします。一年生のみなさんには、高校生活の見習い期間を終えて本格的な高校生活の厳しさを知ってほしい。一年後には、なお平安の活動の中心的原動力として活躍してもらうとともに、自分の将来を考えた努力を積んでほしい。そして、二年後には、すでに絞ってある目前の目標に向かってがむしゃらな努力を傾けてほしい。いずれも遠い先の「結果」に向けて、必然的にその結果が生まれるような日々の努力のプロセスを、山登りのように一歩一歩積み上げていってくれることを願っています。そのプロセスにおいてこそ、確かな成長と喜びを手に入れることができると思います。

■その二
 みなさんは、いろいろな点で恵まれてこの平安に通学しています。ただ独力でこの平安に学んでいるのではなく、背後にたくさんの人々の恩恵があることを忘れてはいけません。
 みなさんは、警備員のおじさんたちの存在を知っているでしょうか。六十歳を過ぎたこれらの人々は、この人生における最後の社会奉仕として、進んで警備員になられたのです。みなさんが学校から帰ったあと、くまなく校内を巡って、カギをかけ忘れていたらカギをかけ、窓を開けっぱなしにしていたら窓を閉め、電気を消し忘れていたら電気を消し、夜もほとんど眠らないようにして、校内を警備してくださっています。おかげで、学校は盗難にもあわず、火災もなくて、われわれは平穏に学校生活を楽しむことができるのです。どうかこれらのことに思いをいたして、帰る時には窓を閉め、カギをかけて帰ってもらいたいです。
 また、便所掃除のおばさんがいることを知っているでしょうか。七十歳近いこのおばさんは、終日せっせと便所の掃除をしてくださっています。あるとき、このおばさんが「私は生徒さんのお便所を守っています」と誇らかにおっしゃったのを聞いて、私は深い感銘を受けたことがあります。「平安の生徒さん」の便所をきれいにすることが、このおばさんの誇りであり、生きがいなのです。
 どうか便所を汚さないようにしてもらいたい。そして、もしこれらのおじさんやおばさんに出会ったら、せめて「ありがとう」「ご苦労さま」のひとことをかけてもらえたらうれしいです。どんなに喜ばれるでしょう。
 みなさんは、たくさんの人々の善意と奉仕、さらには大きな期待を背景にして、この学校に通ってきているのです。大いに勉強してください。大いに運動してください。